カテゴリー : 6.展示・保存

写真の展示について

展示の方法と、一口に言っても、色々目的によって考えられます。

写真美術館でよく見る「ブックマット」や昔ながらの「パネル貼り」が一般的ですが、他に、アクリル板で挟む、あえてプリントのまま四隅を壁に直接鋲等で留める、あるいは天井から吊るすだけ、等、 製作意図次第でインパクトのある展示方法を各自考えれば良いのだと思います。

確かにブックマットは綺麗ですし、高級感があります。保存目的にも即している上、美術館などでのデフォルトスタンダードですんで、すっかり主流になりました。 しかし、高級感も、言い方を変えれば「気取った」バブリーな雰囲気になり勝ちで、写真の内容 によっては「なにも無理してマット加工しなくてもいいのに・・・」と感じるもの も多いように思います。特に最近は猫も杓子もブックマット(あるいはオーバーマットのみ)で、他の展示方法はないのか? という気もします。–極端な話、ブックマットしていない作品は芸術と認めない、といった風潮もあり、ちょっと首を傾げざるを得ません。

額に収まりきらない大きなプリントを、破天荒な方法で展示したほうが迫力があって、見た人に与える印象が良い場合もあるように思うのですが。確かに、保存、を目的に考えれば、最適なブックマットですが、展覧会は展示効果も大事でしょう。 (勿論展示後美術館収納が決まっているような場合は別です)

……なんて偉そうな事を言っていながら私はいつもブックマット(しかも使いまわし)なんですけども。一度作っちゃうと使わないと損な気がして。すいません。

パネル貼りは、最近見かけなくなりましたが、大きい、断落しのパネル写真は、特にブックマットされた写真と並ぶと、観覧者に与えるインパクトが優れています。特に団体展等に出展し、展示形態が自由な場合は 考慮に値します。

今から15年近く前、「田原桂一」さんが「窓」のシリーズを原宿のギャラリーで展示されているのを見に行ったのですが、その時の展示方法が「透明なアクリル板で挟む」というやり方でした。 大全紙程度のプリントを2枚のアクリル板ではさみ、四隅をねじ止め(だったと思います)して展示されてました。 真似ようと思って、東急ハンズでアクリル板を買いに行ったのですが、値段を見て、ぶっ飛んだ覚えがあります(笑)当時アクリル板すごく高かった(今も高いけど)もんで。

印画を直接壁に鋲で留めてしまう、という荒業も、プリントサイズが大きいもの、写真の内容がそれに合っているものなら、とても素敵です。「齋藤亮一」さんが、6~7年前、新宿ニコンサロンで個展をした時、この方法を採られていたように記憶しています。すべて全倍以上の印画が、まるでペルシアン絨毯の如く無造作に飾られていて、とても素敵でした。これは額に収まらない大きな印画でやった場合だからこそ良いのです。半切以下の小さいのでやると、「全国小学校地下鉄標語ポスターコンテスト」みたくなっちゃうので気をつけましょう(-_-)。

パネル貼り

パネルに一度貼ってしまうと、何が困るって、保存が面倒です。
場所はとるし、パネルは写真の保存にけして良いとは言い難い素材で出来ていますから、「パネル貼りの作品は、展示期間のみ存在すれば良い」という割り切りが大切です。

実際、パネル貼り目的で プリントする場合は、いわゆるアーカイバルな処理はしないのが 普通です。いずれにせよ、長持ちするものではありません。展示が終えたら、欲しい人にあげちゃうか、もらってくれる人がいなかったら潔く棄ててしまうのが良いと思われます。あまり環境に優しくありませんが、とっておいてもいずれ物置の中で、埃だらけ、カビだらけ、所々変色して発掘され、結局棄てる時期が延びるだけ、の結果に終わります。

◇パネル貼りの仕方:
襖の張り替えをやったことがあるなら簡単です(要領は同じです。糊は要りません(>_<)

濡れたままのプリント(バライタ使用の事)をパネルに置きます。当然ですが、印画紙のサイズは、パネルより大きくなければいけません。位置を決めて、四隅でパネルからはみ出たプリントの余白を、パネルの裏側に向かって折りかえします。 パネルの外枠の側面、又は裏面
の部分で印画と外枠ををホッチキス等で留めます。多少弛んでいても乾けばピンと張りますので(襖、障子張りと同じです)引っ張りすぎて破らない様に。乾いたら4隅側面周辺を市販のパネル用テープで貼って、出来上がり。 (用品はパネルが置いてある店に揃ってます)

RCペーパーの場合は、(この方法だと)表面の樹脂を剥がさなければなりません。やってもいいですが、めんどいです。RCの場合はむしろ、乾いてからデザインの現場で良く使われるスプレー糊などで貼りつけたり、いろいろ方法はあるようですが、やった事無いものを書くのも憚れますので、割愛させて頂きます。額装を専門にしている店などにご相談下さい。

ブックマット

ブックマットとは、写真のサイズに切り取った「窓」をもつ”オーバーマット”と、”台紙(バックボード)”とをヒンジでつなぎ、写真をセットするものを言います。

保存を考えるなら、これにつきます。ブックマットの素材を注意して選べば、そのままで保存で来ますし 、 また、写真を取り外してしまえば、写真は写真で別に保存しておけば良いので、ブックマットの使い回しもできます。

特に無酸性のミュージアムボードなどで作っておきますと、初期にはかなりの投資になりますが、何度も展示をするなら、結果的には安くつきます。うちの押し入れには、20年前以上に作ったマットが寝ていますが、未だに少しも変色が無く、こりゃお得だったと思います。

オーバーマットについて

当然、ブックマットは、最終的に額装する「額」のサイズに合う物でなければ意味が無いので、自分で額を持っている人以外は会場で貸りる額のサイズを把握しておきます。その額のサイズに見合う大きさと、作品の縦横比、プリントサイズ、写真の余白を考慮した上、オーバーマットに「窓」を開けます。(通常、オーバーマットは「4ply」の厚さのミュージアムボードを使用します)

ブックマットという形にせず、オーバーマットのみ写真に被せただけ、あるいは、オーバーマットの裏面にプリントを巧く位置を合わせて止めても、額装してしまえば見た目は一見かわりません(笑)。が、展示期間中に写真にシワが寄り易く、高級感を演出するつもりのマットが、かえってビンボ臭く貧相になる可能性がありますので気を付けて下さい。しかし、予算の関係でどうしようも無い場合は、背に腹はかえられません。その場合、出来る限りプリントの余白を大きくとり、(出来れば額と同じサイズ)裏面から額の裏ブタをガラス面に向かってきちんと押しつけるよう(適宜スペーサーとして、厚紙などを挟むと巧くいきます)に額装すれば結構行けます。これでバックボード代金、手間賃が浮きます(笑)あくまで急場のしのぎです。お薦めはしません。


オーバーマット切断面は45度。これは、展示した時、照明の「影」が作品中に落ちない様考慮したものです。マットカッター等は、画材屋さん等に行けば置いてありますが、マットの窓開けは、非常に難しい作業です。極めればそれだけで商売できる程です。私はP.G.I等に外注
しています。


上の絵を見てもらえればわかると思いますが、窓は額の中心より、やや上に位置する方が、視覚的に安定します。(写真の余白は、好みで入れなくともよいです。写真(プリント)にサインをしている場合はそれが見える様余白を巧く取ってください)

ブックマットの 作り方

ブックマットの構造は下図の通りです。

  • オーバーマット:4ply
  • バックボード:4ply (注)ドライマウントプレスしたもの{通常2plyのボードに裏打ちしたもの}の場合はバックボードも2plyを使用します
  • ヒンジ:オーバーマットと、バックボードを結合している部分です。開いた状態で並べて、テープを貼って作ります。 ARCHIVALを目的にした場合、「リネンテープ」を使用するのが一般的です。ボードが無酸性紙であるならこれを使用し、糊の面に水を塗り使用しますが、精製水(純水)で行う事が望ましいです。*縦位置の写真の場合は「ヒンジ」が写真の左側に来る様作るのが一般的
  • コーナー:写真を留める部分を指します。

コーナーの作り方
3センチ程度の幅、長さ7~9cmに切ったのテープを下図の要領で折る折った先、あるいは、三角の部分を粘着性のテープでバックボードに貼る。
めんどくさい場合は市販のものを買う。 下図にあるように、パーマライフペーパー、タイベックテープ、又、ブックマットのヒンジに使うリネンテープ(麻のテープ)等を使う事によりより、保存状態を良好に保つ事ができます。

注意)通常はコーナーを作って写真を設置しますが、カラーリバーサル用の「CBプリント」
「チバクローム」の光沢面は平面性能が異常に高いため、コーナーにしてしまうと却って弛み、ずれが起きる場合があります。
この場合は、
この様に 上から ぶら下げる感じで装着します。

平面性を保つ為にも、プリント時出来るだけ余白を取って伸ばしておきましょう。

また、2plyのボードにドライマウント、コールドマウント(裏打ち)したうえでブックマットに収めれば、より展示時の平面性が保たれ、展示効果の上では良いです。 このへんはアーカイバルという立場からは展示効果を狙うか、保存状態を重視するかで意見が分かれています。(マウントティッシュの素材、保存性についてまだ確かな結果が出ていない事に起因します)私個人としましては、ドライマウント、コールドマウント共に行っておりません。んが!これは、上記のような高尚な思想に基くものでは無く、単純に予算の関係であります(T_T)。

しかし、のちのち第三者の手で展示される場合、例えば、マウント方針の決まっている展覧会に出品する、マウントはしない方針の美術館に収納する等の可能性がある場合を考えると、正解かな?とも思ったりして。その為に焼き直すのめんどくさいもんね。っつーか、2度と同じ伸ばしなんてでけんわ。

フィルムの保存

ネガあってこそのプリントです。ネガにカビが生えてしまったら、もうこれは悲しい。

プリントはまだ、焼きなおす気力さえあれば再生可能かもしれませんが、ネガはそうはいきません。ネガをしまうシート「ネガシート」は、長期保存の為にはまず、その素材にある程度気をつけます。まず、セロファン、塩化ビニールはかびやすかったり、フィルムに有害な物質なので避けます。昔のネガで、こういったものに保管されている様なら、さっさと現在市販されているものに交換して下さい。

長期保存写真整理(ポジ・ネガ・プリント)・ポートフォリオ製品等については、下記のサイトが参考になるかと思います。
COSMOS
P.G.I.

「ネガシート」を、何処に保存するか? 日本の気候を考えると、これが一番重要でしょう。特に、新築の、鉄骨or鉄筋コンクリート建築の押し入れなどは、湿気だらけです。これは、セメントやコンクリートに含有する水分が抜け切るのには、新築後数年を要するためです。絶対に押し入れにはしまわないように。(勿論乾燥した場所ならOKです。どんな家にでも「一番乾燥する場所」というものがあると思います。それがたまたま押入れであるならそれはそれでうらやましい)

各家の事情により、乾燥した場所は違うでしょうが、やはり、押し入れは御薦め出来かねます。家の構造によっては、外と面した壁の近くは湿気が多いです。 また、 天井近くも、意外に湿気っぽい家があります。気をつけて。あと、換気の悪い地下室などはもっての他でしょう。ワインクーラーとか、キムチの保存場所にはいいですけど。逆に天井部屋などは向いているかもしれません。(直射日光と、温度(高温)
は避けてください)また、天井の素材によっては、かえって湿気っぽくなるかもしれません。木造で、雪国などの場合は辞めた方がよいです。

風通しの良い、かつ、直射日光の当たらない場所を、優先的にフィルムの保管場所として下さい。そう云う場所って、大抵漫画本等が結構にディスプレィされている本棚などがあったりします。(良い場所に陣取ってるんだ、これが!)この際マンガ本には押入れに退去願って、そこに置くのが賢明です。

シリカゲル、写真用のカビ防止剤なども、市販されてます。上手に使って下さい。

良く、湿気よけには「桐」のタンスが良い。と云われます。桐は湿気が多いときは密閉性が強くなり、乾燥時は通気が増しますから、日本の様に多湿な国では重宝します。んが!、絶対に、ばあちゃんの着物が入っているよーなタンスに、一緒に入れてはいけません。何故か?

「防虫剤」です。防虫剤に含まれる成分はフィルムにとって、大変有害なものです。どうしても桐を使いたいなら、新たに用意しましょう。

フィルムは、シートにしまってしまうと、どこに何が写っているのか、てんでわからなくなっちゃいます。きちんと、撮影時、場所を解り易く書いて簡単に参照できるようにしておかないと・・・・あとで泣きます。

どうやって、整理しようか

私は始めは、テーマごとに箱を別けて、その中に保存していたのですが、あるテーマで撮った物も、他で使ってしまったり(笑)、途中でそのテーマの撮影続行を断念したり(泣)で、ごっちゃごちゃになっちゃいました。さらにテーマが曖昧な撮影などが出てくると、こりゃもう整理不可能ですな。「その他」なんて、ケースに書いちゃった日には、もう、そこはゴミタメ状態。おしまいです。2度と見られぬ傑作?がこうして埋もれて行きます・・・
・・・・・・・・・・・・そのほうが良かったりして(笑)

そこで、現像が終わったフィルムには、片っ端から「とにかく番号」をふり、その番号と、内容を、ノートに書きとめることにしています。 目的のネガを探す のは、まず、ノートを参照し、番号だけメモしておき、その番号の書いてある「ネガシート」を保管場所から引っ張り出してくれば済みますから、テーマごとにネガのしまう保管場所に悩む必要が無くなります。ただ、機械的にネガは「番号順」に並べて保管しておけば済みます。

当時はパソコンというものが無かったので、こういったノートにしましたけど、データベースなどを巧く利用すれば、検索が楽でしょうね。
私は・・もうこれでいいです。どうせモノクロネガなんてもんはアナクロ・・いや、アナログなもんですから、こういった作業が合っているような気がするのです。

TOP